デカフェレポ:chouette torréfacteur laboratoire

飲まず吸わずな生活をしているもので、嗜む品といえばコーヒーぐらいなんだから、ちょっと凝ってみてもいいのかな思いハンドドリップ道具を一式揃えてみたはいいものの、じわじわとカフェインアレルギーっぽい症状が出るようになって、ついにはコーヒーを飲んだあと調子が悪くなるようになってしまった。

なんか最近は胃が弱って激辛的なものも我慢して食べないようにしてるし、これでコーヒーまで飲めないとなるとこの世の楽しみがほぼすべてなくなってしまう。

ならばカフェインレスの豆を買えばいいかと近所の店で探してみるも、色んな豆の種類を置いてる店でも大体デカフェ豆は1種類しかなくて、飲み比べる楽しさみたいなのが全くない。

いよいよ俗世の楽しみを断ち切って悟りを開くしかないかーとなっていたが、どうやら日本にはカ〇ディ以外にもコーヒー豆を買える場所がいっぱいあるということに気付きはじめる。しかもお店で自家焙煎している店も結構あるらしい。ドトールとかスタバがソニーやエイベックスだとすると、そこに対するインディレーベルって感じだ。かっこいい。

通販で買える店が全国各地にあるのだから、色んなお店のデカフェコーヒー豆を飲み比べて楽しんでいけるんじゃないか。

というわけで、焙煎所を紹介してくれている「Only Roaster」というサイトから、初めてなので試しやすい100gから売っている所を探し、今回はchouette torréfacteur laboratoireの「COLOMBIA AGPROSEM Natural Decaf 100g Light roast」をオーダーしてみた。

密封状態で届いた豆。袋にチャックが付いているので、開封した後もそのまま保管できて便利。

開けてみると、豆の色が薄めなのと、苦みのある匂いがあんまりしないことに驚く。これが浅煎りというものなのか。よく考えてみると浅煎りって飲んだことがない。

豆もカラッとしていて硬めで、ミルで砕くときにかなりゴリゴリいく感じだった。

淹れている時からかなり酸味が際立ってたが、飲んでみると柑橘類みたいな酸味が。ある程度酸味があるコーヒーは飲んだことあったけど、こんな柑橘っぽい風味に感じたのは初めてかもしれない。舌に残るような苦さは全くなくてかなりすっきり。ブラックでも爽やかだけど、砂糖とミルクを入れるとコーヒーというよりもはや紅茶か?というぐらいのライトさを感じる。

初回にして中々驚きがある経験だった。コーヒー、幅が広い。。

これからも買ったらここに健忘録的に感想を書いていけたらと思う。まあ大して違いが分かる大人ではないから実のあるレビューは書けないけれども、細々続けていければ。

VRChatはじめました

※このエントリは「変わった/変わらなかったこと Advent Calendar 2020(https://adventar.org/calendars/5227」の24日目です

通称ぽっぽアドベントも今年で2回目!今年もまたアドベントに参加する形で、色んなひとと一緒に今年を振り返ることができて嬉しいです。

私は去年のアドベントでは、音楽フェスを観るため人生で初めて海外旅行をした話を書きました。

つまり去年は人生の中で一番家から遠くへ離れる経験をした年でしたが、反対に今年は人生の中で一番家から離れなかった年になりました。

海外フェスどころか、国内の音楽イベントにも全く行かなかった2020。

感染症の拡大や社会情勢とは別のところで、個人的に体調を崩し気味になってしまったこともあり、「もはや肉体、要らないなあ。肉体を捨て、ヴァーチャルな存在として生きていきたいなあ」、という願望は年末に向け高まるばかり(肉体があると寒いし)。

というわけで、VRChatをはじめてみることにしました。

VRChatとは

アメリカ合衆国の企業であるVRChat Inc.によって運営が行われているソーシャルVRプラットフォームである。

SteamまたはOculus Storeにて無料でダウンロードできる。Oculus Rift, HTC Vive等に対応したバーチャル・リアリティヘッドセットを使用してプレイすることが出来る。また、バーチャル・リアリティヘッドセットを利用しないデスクトップ版で遊ぶことも可能である。

wikipedia VRChatの項目より(https://ja.wikipedia.org/wiki/VRChat)

VRChatはボイスチャットでおしゃべりしたり、イベントなどで交流したりすることがメインなので、実際はあの映画みたいに壮大なバトルを繰り広げたり熾烈なお金稼ぎをしたりする必要はありません。

また、『レディプレイヤーワン』もそうですが、映画やドラマに出てくるVR世界というと「あらかじめ提供されたバーチャルなゲームの世界に入ってプレイヤーが遊ぶ」という印象が強いです。

しかしVRChatはむしろユーザー主導の場になっていて、アバターや、周りの環境(世界)そのものも自作できたり、各自がゲームを作ったりイベントを主催したり、遊び方そのものを好きに作っていくという側面があります。コミケとかボカロ文化とかとも親和性が高い気がして、日本のユーザーが多いのもうなずけます。

また、VRというと例の頭にかぶるゴーグルみたいなやつ(HMDというらしい)とか、専用のコントローラー等が必要なイメージですが、VRChatは普通のPCだけでも遊ぶことができます。わたしも特にVR機材は持っていないので、ゲーム販売/配信プラットフォームであるSteamからVRChatをPCにダウンロードさえすればプレイする準備は完了です。

Day1

この日はちょうど12月1日、わたしは自分の中だけで「VRChat初心者デビューアドベント」を開始しました。

VRChat(以下VRC)をはじめた者はツイッターで「#VRChat始めました」というタグをつぶやいてみると沢山反応がもらえる、という先人のアドバイスに従い、まずはその通りにしてみました。

詳細は後に回しますが、実はVRCを始めたばっかりの初心者はまだオリジナルのアバターを着て動き回ることができないので、まずはVRC側で提供されているアバターを使わせてもらうことになります。(かわいいのからイカツイのまで色々選べます)

わたしはなんだか『アイ, ロボット』とかに出てきそうな、いかにも人間の感情を理解することができなさそうな青いアンドロイド姿でVRCに突入することにしました。

Day2

ツイッターでアッピールもしたことですし、なにかリアクションもらえてたら嬉しいな、とわくわくしながらVRCにログインすると、なんとフレンド申請が来ている!!これでやっとVRCの入り口に立てた気がします。

後から知りましたが、この時にフレンド申請をくれたライテルさんという方は、VRCの色んな場所に現れては全く言葉を発することなく「そこにただ佇んでいる」ことでVRC界の妖精さんっぽい存在として都市伝説的に有名な方らしく、よく初心者にフレンド申請を送ってくれるようです。なんだかよくわからないですが、そこはかとなく優しさ的なものを感じます。

Day3

フレンドはできたものの、残念ながらすぐに誰かと気さくに交流できるようなスキルと人間性は自分にありません。

そもそもチャットに必要なヘッドセットマイク自体が家にないとか環境的ないろいろもあり、とりあえず会話せずになんとかならないか、と早くもじゃあVRCをやる意味ってなんですか的迷宮に迷い込みそうになりましたが、きっと自分以外にも「ボイスチャットはハードル高いよ」なひとはいるはずだと情報を検索したところ、「無言勢」というひとたちがいることを知ります。

”チャット”と銘打たれてはいるけれど、別にチャットしなくても友達は作れる。。これもひとつの多様性。。わたしはここにいていい!かもしれない!!

Day4

「無言でもいい」を自信にかえて、この日は勇気を出してVRCのソーシャルの舞台、「ワールド」に出向いてみました。

VRCには無人島だったりテーマパークだったり、日々増殖する様々な「ワールド」があって、自由に遊びに行くことができます。

ワールドでは、実際の街みたいに偶然そこに居合わせた人と自由に交流することもできれば、逆に制限をつけて自分が招いた人しか来られないようなプライベートな空間を作ることもできるのですが、わたしは詳しいことが分からなかったので、とりあえず万人に開けている適当なワールドにいきなり行ってみることにしました。

選択画面からピックアップしたワールドにワープしてみると、そこは夜のジャングルみたいな空間で、遠くの方の開けた広場で何人かが焚き火を囲んでおしゃべりしているようでした。

わたしは雰囲気に慣れるため、まずは木の陰に隠れて端っこのほうでただじっと彼らの様子を見ていました。

おそらく不審に思われたのでしょう。遠くにいたのでバレてないと思っていたんですが、焚き木の近くで談笑していたグループのひとり、猫耳をつけた美少女が突如猛スピードでこちらに近づいてきます。

その瞬間、考える暇もなくわたしは「ホームに戻る」ボタンを押してその場から消えていました。

あとから考えると木の陰からこっそり人を観察しておいてバレたら速攻で逃げるとか気持ち悪い人間すぎると思うし、相手は普通に交流を図ろうとしてくれていただけかもしれないのにと後悔してるんですが、理解できる言語で話しかけられるかもわからないし、そもそも話しかけられてもこちらは喋れないし。。

ヴァーチャルでもここまで交流にビビってしまうとは、まだまだ公共空間に入っていくのは自分には早かった、と反省の日なのでした。

Day5

そもそも「無言勢」、VR機器を持っていればジェスチャーである程度意思疎通できたりしますが(それこそ手話でコミュニケーションすることも可能なので、VRC内で手話講習会なども随時開かれているようです)、私のようなPCデスクトップのみでプレイしている人間が無言でやり通すのはなかなか難易度が高いのかも、と感じはじめます。

デスクトップ版にもジェスチャーや絵文字を表示する機能はあるのですが、これも慣れないと即座にその場にあった反応をするのは大変そうです。

その気概があれば観葉植物的にただそこにいるという参加の仕方もありとはいえ、小心者なのでノーリアクションを突き通すのもそれはそれでビビる。

なんとか実際に喋ることなくリアクションすることは出来ないか。。と考えていたところ、いわゆる「音声読み上げソフト」に喋ってもらう、という方法にたどり着きました。

棒読みちゃんという無料の読み上げソフトがあるようだったので、早速インストールしてみます。

テストしたところ、タイピングした文字をちゃんと喋ってくれました。いかにも機械っぽい音声ですが、これはこれで肉体を持たない者感を盛り上げてくれていいような気もします。

Day6

毎週土曜日に「Silent Club」というクラブイベントが開催されているらしいことを知ります。なにがサイレントかというと、そこに行くと全員強制的に音声にミュートがかかり、声が発せなくなるワールドになっているようです。

Silent Club公式サイト

これはまさにわたしが求めていた、非コミュ人向きのクラブイベントだ!!!!

誰もしゃべれないのだから、しゃべらないことを気に病む必要はありません。

それに、バーチャルでクラブイベントに参加できるなんて最高です。

オーガナイザーとフレンドにならないと入れないようだったので、とりあえずフレンド申請を出し、来週を待つことにします。

Day7

来週までにとりあえず他のワールドも回ってみようと思い、一人でも楽しめそうなワールドを探してみました。

AIとオセロ対戦が出来るワールドというのを見つけたので入ってみます。

なんとかオセロに勝つことができたので、ここで棒読みちゃんを導入したことを思い出して、「やったー」と話してみました。

しかし相手はAIなので、話しかけても反応はありません。

これでは自分がVRC内でちゃんと話せているのかわかりません。

こんなことでいいのだろうか。。

VRC内にあるペンは、空間に落書きすることもできます

Day8

この日もひとりで面白そうなワールドを探して遊んでみました。ファービーを投げるのは楽しいです。

でもいつまでもひとりで遊んでばかりいては棒読みちゃんの真価が発揮できません。

そこでゲームが得意なリア友に頼んで、ちゃんと自分がVRC内で音声を発することが出来ているか確認してもらうことにしました。

いろいろ設定を試した結果、最終的にVRC内で喋ることが可能に!

これでバラ色のVRCライフの始まりです!!

day9

しかし、これで実際に会話に反応するにはかなりのタイピング速度が必要。。

おまけに今わたしがメインで使っているキーボードは自作したもので、標準的なキーボードよりかなりキー数が少なくなっています。

(余談になりますが、自作キーボードはマツコの知らない世界でも特集されたりして今ひそかに(主に末広町あたりで)熱いのです!)

これでもひととおり必要なタイプはできるので、一応ちゃんと使えるものではあるのですが、いまだにちょいちょい打ち間違ったりキーを割り当てたポジションを忘れたりします。(でも見た目がかわいいから意地で使っています)

なのでこの日はよく使いそうなショートカットをまとめたり、「こんにちは」などの単語を素早くタイプする練習をしました。なにごとも練習が大事です。

TR-808を意識した配色の自キ

Day10

この日はメディアアートを展示している仮想の美術館がVRC内で公開されたとのお知らせをツイッターで見たので、行ってみることにしました。

美術館ならひとりで行ってもよさそうだし、万一誰かに話しかけられてもわたしには音声読み上げの術があります!かかってこいや!!

バーチャル美術館、本当に景色のいい美術館だったので興奮して動き回っていたところ。。

Day11&12

一瞬忘れてましたが、わたしは三半規管がげきよわなので3Dゲームとかやるとすぐ酔ってしまうのでした。無理をしてはいけなかった。。

盛大に酔ったことですっかりビビってしまい、土日はログインを控えることにしました。(土曜日はSilent Clubが開催されているというのに・・)

まあ「3D酔いは段々慣れる」という意見も見たので、くじけずにちょっとずつ慣れていきたいです。

とはいえ結構くじけてます。こんなことではいつまでたってもヴァーチャルに生きることなどできません。そもそも酔ってしまうのだって肉体があるのがいけない。誰もお前を愛さない。

Day13

さてこの日もログインできず、わたしは少し焦っていました。プレイしないと、その分「トラストレベル」が上がらないからです。

トラストレベルというのは何かというと、その名の通りユーザーの「信用」レベルなのですが、これはログインしてプレイした時間の多さとか、フレンドの多さとかを基に段階的に上がっていくものです。(明確な審査基準は分かっていないようですが)

要は荒らし目的とかじゃなくて普段からちゃんと遊んでる人間だよね、というのを証明するための仕組みですが、レベルが上がると何がいいのかというと、これでやっと自作したオリジナルのアバターをアップロードすることができるようになるのです!!(また、自作する以外にもboothなどで販売されている好きなアバターを使うこともできるようになります!)

やはり、VRCとほかのSNSとの大きな違いは、仮想肉体(アバター)を持ってヴァーチャル空間を歩き回れるという体験です。自分の好きな見た目になって世界を歩けたら楽しいですよね。

いつかわたしもそうなれたらいいなあ。。

Day14

まだまだトラストレベルは上がってくれないので(短時間しかログインできないせいですが。。)、今のうちにアバターを納得いくレベルに仕上げよう!と思い立ちます。

アバターにする用の3Dモデルは、blenderという無料(!!)の3Dソフトで作成することができます。

作り方はこの動画が初心者にもすごく分かりやすくて、もうこの通りにやれば誰でもいちからモデルを作れちゃいます。

(興味が出たひとは気軽にチャレンジしてみよう!)

Day15

説明動画を見つつ手直しを加え、VRC用の3Dモデルがなんとか納得できるレベルになってきました。トラストレベルが上がったら、こいつをVRCにアップロードして使ってみようと思います。

実はこれまでにも何回も作っては納得いかず作り直すを繰り返していて中々完成させられなかったんですが、一旦はこれで動けばオッケーということにしました。自分の能力に見合った妥協は大事ですね。

ちなみにこのキャラクターはなんかいつの間にか誕生していたアノンチャンというオリジナルのキャラです。いつの間にか誕生して以来、アイコンなどに使っています。一応このくすんだピンク色以外にも色んな色のアノンチャンがいるという設定があったりします。

Day16

なんかメールボックスにVRC公式さんからお知らせが届いていました。

開いてみると。。

自作アバターが使えるようになった通知!!

ちょうどモデルもいい感じに出来たところで、なんという神タイミング。ちょこちょこ隙間時間でログインしていたので、ついにトラストレベルがあがったんですね!

実際にモデルをアップロードするにはUnityというゲームエンジン(これも個人利用では無料)が必要だったり、見た目の調整などの細かい手順もあったりしますが、大枠は上に貼った動画で説明してくれているのでそれに沿ってアップロード作業をしていきます。

(アップデートでバージョンが変わっていたりでちょっとやり方変わっている部分もあったので、適宜ググっていきましょう)

Day17

しかし連日、日中はオフィスワークで夜はVRCでずっとPCに貼り付いているのも心身によくない気がします。たまには自然も見ないとね。

この日はちょっとお休みをとって動物園へ。

これはグンディという、ネズミに似たきなこもちです。もちなのに動いてます。かわいいですね。

2、3年前から動物園とか水族館に行くのがマイブームで、なにげに今年も隔月に1回ぐらいの頻度で行っていた気がします。

特に動物園は値段も安いし、敷地面積が広い園を狙えばそこまで密になることもないし、自然の中をめっちゃ歩くので健康にもいいしいいことずくめです。

ただこの日はマフラーを忘れて寒すぎたのでちょっと風邪ひいた気がします。

Day18

さて気分転換もできたところで、

勝利のアノンチャン

遂にアバターをアップロードできました!自分のキャラがVRC内で動いています!!感動~~。

上のツイート内の動画はあらかじめ登録されているジェスチャーをさせているのですが、VR機器を持っていれば実際の自分の動きに合わせてアバターを動かせるんだなあと思うと、やっぱりハードがほしくなりますね。。

ただ、ゴーグルを使ったときの画面酔いはデスクトップの比ではなさそうなのと、ぽんと買えるお値段ではないというところが厳しい。

今はレンタルサービスなどもあるそうなので、いつか1回試してみるのもありなのかなあと考えたりもしています。

なんにせよ、今はVRC内にアノンチャンを召喚できただけでも満足です。

顔がでかすぎて出来ないポーズが多いとか顔がでかすぎてパーツが埋もれるとか色々あるんですが、もう、かわいいのでOKです。ああかわいい。自分かわいい!!

Day19

「自分かわいい」という圧倒的自信を得たことによって、もう恐れることは何もなくなりました。

話しかけられてすぐ反応できなくても、音声の活舌がよくなくても、ジェスチャーが乏しくても、ただそこに突っ立っているだけで自分はかわいいからいいのです。

世のかわいいものたち(猫とか)ってこういう無敵な気持ちで生きているんでしょうか。。

そしてこの日はちょうど土曜日。Silent Clubが開催される日です。

ちゃんとオーガナイザーの人にフレンド申請は済ませたし、あとは時間になったら開催地に行くだけです。ついにバーチャルクラブイベントデビューだ!!!!!

その時のフロアの様子はこちら。

Silent Clubの様子

誰もいない…..?

おかしい。。狐につままれた気持ちでフロアを3周ぐらいしてみましたがやっぱり誰もいません。

イベント開催時間が21時からだったので、「じゃあ22時ぐらいに行けばいいのかな~」というタイム感覚で結局22時過ぎ頃行ったのが悪かったんでしょうか。。 ヴァーチャルのイベントは現実のイベントよりめちゃくちゃパンクチュアルで、1時間きっかりとかで終了して全員解散したあとだったのかもしれません。それか自分だけみんながいるのとは別次元のフロアに飛ばされてしまったのでしょうか。

謎はつきませんが、とにかくいないものはいないのです。ぼっちのフロアっていうのも現実ではあまり経験できないし、まあこれはこれでいいでしょう、わたしにはまだまだぼっちがお似合いなのです。

Day20

そんなわけで、結局まだ全然VRC上でまともなコミュニケーションをとるに至っていないわたしですが、これからもおそるおそる色んなワールドに行ってみたいと思っています。

当面の目標?はリアルで行けなかったクラブイベントや音楽イベントに行ってみることと、自撮りができるワールドで映え自撮りをとることです(映える姿になれたので・・・)。

もっと英語話者に話しかけて英会話の勉強がしたいとか、イベントで演奏する側にも回ってみたいとか志高いこと言いたいんですけど、エナジーが少なめの人間なのでとりあえずはそこらへんで。

そしてもしこの記事を読んでくれた人の中で「私も始めようかな」と思ってくれた人がいたら、ぜひフレンドになってください!

zoomとかmocriとかに比べると導入に手順が必要だったりPCのスペックもある程度要求されたりしますが、そのぶん臨場感はあるので、イベント後のオフ会とかで居酒屋ワールドに集まれたりしたら楽しいんじゃないかなーと思います。

あと、ワールドの中でyoutubeの動画とか表示して皆で見るみたいなこともできたと思うので、オタクプレゼンとかミーティングとかするのもいい気がします。

変わらなかったこと

以上がわたしの今年ちょっと変わったことでした。

今年は映画館に行く回数も減っちゃったり、その他生活形式の変化によって変わっちゃたルーティーンはいくつかありました。

しかしニューノーマルとか言われても人間性は簡単には変わりません。相変わらずオタクなのでツイッターではドクター・フーとかの話ばっかりしているし、相変わらず計画性がないのであれもこれもやりたいとおもいながら出来なかったことが沢山ありました。

まあでも年末までどうにか死ななかったので、それで十分かなあとおもっています。

みんなもできるだけ死なないようにして、できるだけ足は冷やさないようにして年末を過ごしてください。

さいごに

ぽっぽアドベント今年はみっつもあって毎日読み応えたっぷりですね!毎日全部読んでます。

野生のオーガナイザーはとさん、今年もお忙しい中アドベントの企画・運営ありがとうございます。はとさんのホスピタリティがみんなの「書きたい」気持ちに火をつけてるんだとおもいます。感謝!!

そんなアドベントも明日でなんとラストです!!!!

明日の担当は、みなみさんさん、そしてはとさんです。

SWに出会ってSWにお別れする話

TROSを観てきた。

ディズニーが言う「真実の愛」とは、「もののあはれ」の対義語である。
真実の愛による魔法のキスは、そんなわけで、バケモノを美しい男に変えたり、壊れたメモリの記憶を復活させたり、死んだ人間を生き返らせたりする。
この王国では、夏になっても雪だるまは溶けず、子供の頃のイマジナリーフレンドには、クローゼットを通じていつでも会える。
「キャラクター商品にお金を落とす限り、あなたはずっと子供のままでいていい」と、妖精が耳元で囁いてくれる。

わたしたちは回転木馬に乗っている。
ここでは誰もが王様で、目の前には次々と、自動的に、あらゆるお菓子が差し出される。
TROSがもしもキャンディの内のひとつだったら、甘いだの苦いだのと言えたことだろう。
だけどこれはキャンディではない。木馬のほうなのだ。
だからもはや、良いも悪いもない。あるのはただ「からくり」だけである。

この巨大な機械は一体、誰のために動いていたのだろう。単に止めどない創作意欲を昇華するため、はたまた、それは子供たちのため、特に、どこかの名もなき孤独な少女のため、または、世界から脇役に押しやられた人々のためだったのだろうか。
いまやそれは、臆病風に煽られて、慣性だけでくるくる回っている。

実際のところ、乗っているわたしたち自身が、ここで回り続けることに決めたのかもしれない。
そうだとしたら、わたしはもうそんなファンダムの一員でいたくない。黄色いロゴが印刷されたTシャツを着て、暗黙のうちに”仲間”と連携したくない。
いっそ雷をおとして、全て燃やしてしまうべきだろうか。
確かにわたしはSWを愛していた時があったし、夢を見て心躍った時があった。その記憶があれば充分ではないのか。
それに、きっと私が求めるSWは過去ではなく、常に未来にあるのだ。

こんな風に書いてはみたけれど、思い出してみると、わたしがSWを好きになったきっかけは、『シスの復讐』の冒頭のドッグファイトを見て「宇宙ってかっけー」と思ったから、というあまりにささやかな理由に過ぎなかった。

だからわたしが自分なりにSWを愛したように、きっと誰かもまたTROSを見て、誰かなりにそれを愛するのだとおもう。

The Horrorsを追っかけて初めて海外フェスに行った話

本投稿は、私が動かされたもの Advent Calendar 2019
https://adventar.org/calendars/4375
12月3日エントリー記事です。

イントロ

英語圏において、ツイッターやblog系サービスよりもインスタグラムがポピュラリティを獲得してしまったことの悪い点は、それで誰も文字を書かなくなってしまったということだ。というのが、深夜三時に、カオサン通り沿いの安宿のベッドでわたしが考えていたことだった。

そのベッドは自宅から約4600km離れていて、そんなに遠くで眠ったのはその時が初めてだった。

平たく言えば、わたしは人生初の海外旅行に来ていて、それはバンコクの音楽フェスに出演するザ・ホラーズというバンドを追っかけてきた為なのだ。

カオサン通りは眠らない繁華街で、午前三時を回っても窓の外では流しのミュージシャンたちがアメリカのポピュラーソング……「カントリーロード」から、マルーン5の「This Love」までなんでもござれ……を爆音で演奏し、人々は道路の真ん中に集まって絶え間なく合唱している。わたしはその健康的すぎる猥雑さを既に愛し始めていたが、そんな喧騒の中でさえ、インスタのフィードを手繰る指の動きはマシンのように合理的だった。

わたしの親指はほぼ無意識のうちに、しかしハイエナのごとくハッシュタグ#TheHorrorsをつけ回し、偶然、熱心な地元のファンが街中でバンドメンバーに遭遇したという投稿を発見する。そこには確かに、ホラーズの面々とラッキーなファンが笑顔で写っており、それは微笑ましく、見ているこちらも嬉しくなった。だがーーーー。

不自然だ。インスタには本文というべきものがない。しかし一体誰が、自分の推しに出会えたという一大イベントをシェアするのに、一千文字のキャプションをつけずにおられるというのだろう。内容は問題じゃない。「い、いま歩いてたら向こうからああああああああああああああ・・・」とか、「ぎぇええええええええええええええええごごごgklhn・・・」とか、なんにせよ一千文字は必要なはずである。

しかし、そうはさせないのがインスタグラムなのだ。インスタグラムというのは、オタクにとってはどこか奇妙なプラットフォームだ。まるで出口に売店のないテーマパークみたいな設計だ。インスタグラムは、”注ぎ口から酒を注いではいけない徳利“のような理不尽さで、たしかにそこに文章を書けるスペースはあるが、あくまでそのスペースにはハッシュタグを置くというのが作法だ、という。

Live Journalのデザインはユーザーにト書きを求め、Tumblrは注を、ツイッターはモノローグを欲した。だがインスタグラムはユーザーに光を与える代わりに、あらゆる幕間を削ぎ落とし、ポップソングを1分以下にし、感情から述語を奪った。

しかし、オタクの魂とは本来、インスタの設計思想が「余分」だと判断した影の部分にこそ、宿るようなものではなかったろうか。
いまや、スマホで撮影したライブ動画をシェアしてくれる人は多いが、「自分の目にその光景がどう映ったのか」をシェアすることに熱心は人は少ない。
「ファンサイトのBBS」に長文のライブレポートを書き込んでいたあの頃の匿名のオタクたちは、一体どこへ消えてしまったというのか?

そうしてインターネットの海を孤独にさまよっていたわたしは、ある日はと氏によるアドベントカレンダーの執筆募集記事を見つける。

そして天啓を受けるのだ。

「お前が書くんだよ」

ヴァース

さて、The Horrorsとは、イギリスのロックバンドであり、UKインディーロック界ではすでに”中堅的存在”と言われているが、KlaxonsとかThe Kooksあたりのデビューをリアルタイムに見ていた人たちにとっては、サマンサ・モートンが大変なことになっている「クリスカニンガムのビデオ(https://youtu.be/Qqo3yR109wE)」でおなじみかもしれない。

デビュー作で強烈なインパクトを残したのち、2ndアルバムの『プライマリーカラーズ』は名盤との評価も高く、先日ロイヤルアルバートホールでアルバムの全曲再現ライブが行われたぐらいには人気があるらしい。

アルバムごとに音楽性に幅があるので(youtube世代のバンドはみんなそうだろうが)ジャンルで総括するのは難しいが、ケネス・アンガーの映画を逆再生したような”おどろシス・サイケデリック”感と、歪んだギターやノイズをテクスチャーとして構築する”デザイン性の高い音像”という要素は通底しているように思う。

初期代表曲である”Mirror’s Image”には彼らの個性が集約されている。

よく世間では「ワンクリックで」というのをお手軽なことのように言うが、実際のところ「ワンクリックする」という行為には少なくない精神的コストがかかることについてわたしはよく理解している。
なので、ここで実際に動画を再生してみる人は全体の0.1%に満たないと予言するが、その0.1%のほうに入ったレアなあなたはすでに気づかれたはずである、ホラーズは基本的になんか全員作画が「快感フレーズ」である、という事実に。


Did The Horrors Love 2005?
https://www.loudandquiet.com/short/horrors-love-2005/

( †ようこそ○○人目の暗黒の堕天使・・・† 感のあるデビュー当時。全然名前負けしていない)

重要なのは、彼らは単に偶然に出会って友人同士になったというだけであり、なにもメン募掲示板で「vo以外募集!股下○○cm以上でスキニージーンズを履けるのが条件です!」とかやって集めたわけでも、エックスファクターに別々にエントリーしていた若者がサイモンコーウェルによって集められたわけでもない。THE HORRORSはなんの前兆もなくイギリスの南のほうから突然ぼうふらのようにわきだしたのだ。これは生命の奇跡である。

そこで、ナショナルジオグラフィックが取材する代わりにVICEがよちよち歩きを始めたばかりのホラーズにすぐに密着し、NMEに至ってはまだアートスクールの学生だったボーカルのファリスをいきなり表紙に抜擢するという強火のパトロン化してしまった。まだデビューアルバムも出す前の話である。

こういうことが起こった2006年当時というのは、雑誌の影響力が今より大きかったし、spotifyのリンクからすぐに音源をチェックする代わりに、バンドのヴィジュアルやイメージからどんな音を出すのか夢想して楽しむ自由のあった最後の時期だったのかもしれない。なんにせよ、彼らのファッションやヴィジュアル戦略にはメディアが放っておけない求心力があったのは確かだ。

もっともデビュー時のルックに関していえば、当人たちとしても、ファンション雑誌が仕掛けた”ネオ・ゴスの旗手”的なタームの方が早々に自分たちを追い越して行ってしまった実感はあるらしいが、まあ”イメージ戦略”とは常にそういう(本人たちとは関係がない)ものなのかもしれない。

Embed from Getty Images

(その反動か、「ネオゴスとか知りませんね・・・」な服装になった時期も)

かくいうわたしもフロントマンであるファリス(Faris Badwan)のカリスマ性にノックアウトされた人間のひとりである。
忘れもしない2年前の夏、レーベル会社Hostessが主催するオールナイトイベントで、わたしは偶然、初めて実物のホラーズのライブを見た。
その時わたしは、遠目のシルエットだけでも、ファリスがどこか別の星からきたんだということに気がついた。
公式の情報によれば、彼はパキスタン人の父とイギリス人の母のもとに生まれたという。しかし、それならば、もしも彼がわたしと同じ地球の生まれだというのならば、彼の髪の毛の一本一本は、蔦のように絡んだマイクケーブルは、レイザーライトやスモークでさえ、なぜ、この世のあらゆる物理法則を無視して、寸分の狂いもなく、まるで宇宙の始まりから、彼をロックボーカリストという芸術作品にするためだけに生まれてきたのだというふうに、彼に従い、振舞うというのだろう。

コーラス

フェス当日。
開場時刻まで余裕があったので、BTSパヤタイ駅近くにある人気のカフェ、「ファクトリーコーヒー」に寄ってみた。
カフェラテっぽい飲み物が、ワイングラスのような脚の長いグラスに入れられて、かっこいい木の板に乗って運ばれてくる。「映え」のレイヤーが厚い。
タイでもサードウェーブコーヒーが流行りらしく、どのカフェもオシャレで、原宿にあったら行列になるだろうなあ、とおもわせる店ばかりだった。

ゆっくりお茶をする余裕があったのは、フェスの開催時間が14時から0時過ぎまでとレイジーめの設定だったからだ。(ゆっくりしすぎて実際に開場に着いたのは17時頃になってしまったが…)
日本でもこうしてほしいところだが、深夜1時に幕張メッセに放り出されたりしてもそれはそれで困ってしまう。タイには安い足が多く、電車が止まっても困らないので成立することなんだろう。
事実、閉場後の会場入り口にはバイクタクシーの客引きが大挙していた。


https://www.mahorasop.com

Maho Rasopは今年で開催2回目の出来立てホヤホヤのフェスだったが、運営もまともだったと思うし、むしろかなり快適な環境ですらあった。特に、支払いが全て予めチャージしたリストバンドで完結するのはありがたかった。おかげで慣れないタイバーツをガチャガチャやる必要もない。

インターナショナルなフェスとはいっても、タイムテーブルの通り、出演アーティストの数自体はそれほど多くない。
会場はチルめなアーティストが出るサブステージ、メインステージ、屋内クラブという構成で、各ステージ間の移動は5分ほどで済む規模感。
メインステージの面積はそれなりにあったが、フード系の屋台は十店舗ないぐらいのスペース。飲み物は水か、バケツに入ったなにやら緑色のアルコールかの二択しかなかった気がするが、迷うことにエネルギーを使わせない選択肢のミニマルさが逆に良かった。

なによりこの規模感で、インディーロック系のバンドをどーんとフィーチャーしているのが個性的でかっこいい。
バンコクの主要なライブプロモーター/オーガナイザーであるHave You Heard?、Seen Scene Space、インディーミュージックシーンのコミュニティサイトであるFungjaiが主催しているのだが、地元バンドのショーケース的な側面はもちろん、活動再開したばかりのBombay Bicycle Clubをヘッドライナーに持ってくる話題性とか、韓国のSay Sue Meなど他アジアのインディーバンドへの嗅覚もきいている。
ちなみに去年のヘッドライナーは(個人的には『ひつじのショーン UFOフィーバー!』のサントラでカイリーミノーグとコラボしていることで話題沸騰の)英バンドThe Vaccinesなのだが、実はこのヴァクシーンズのギタリストはホラーズのキーボード担当であるトムの弟なので、この人たちは兄弟でマホラソップに出演していることになる。

チケット代は早割でも2500バーツほどで、これは日本円だと約9000円。タイの宿とか飲食店の安さから考えると結構強気な設定な気がするのだが、最初から半分観光客向けを想定しているようなところがあるのだろうか。実際、フェス会場にいた半数ぐらいは国外から来ているような雰囲気があった。
実は、会場内では日本語も結構聞こえてきた。ホラーズのステージの待機中には後ろのほうで「僕はファリス・オンリーです!」という会話をしている人がいたし(とても気になるセリフだ)、他にもツイッターでホラーズ目当てで渡航したという人を見かけた。こういう時、きさくに話しかけられれば良いのだが、「でも自分キモヲタだし・・」という自意識が邪魔してしまってよくない。

タイには現代でもセンスのいいサイケロックバンドが数多くいるそうなのだが、10年前ぐらいからじわじわと、世界的にタイ音楽をレアグルーヴ文脈で再評価する流れがあり(最終的にブームにしたのはDJマフト・サイ氏のパラダイス・バンコクというイベントの功績が大きいらしいが、日本のタワレコでも一時期タイ音楽コンピがよく特集されていた記憶がある)、そこから逆輸入的にルーツ音楽を再発見した若者も多いのではないかと勝手に予想している。

最近ではタイの若者には(EDM以外だと)ポストロックが人気なんだそうで、ここにホラーズが呼ばれるのも納得だ。
既に来年の開催も決まっていて、ブラインドチケットは2690バーツで売られているから、興味がある人は公式インスタをチェックしておくと良いと思う。

ところで前述の通り、わたしと連れはかなり遅めに会場に到着したのだが(ここでいきなり登場するが、今回は旅なれた友人に同行してもらっていた。彼女がいなければわたしは成田空港から一歩も出ることなく死亡していたはずなので、深く感謝)、それでもメインどころのアーティストはたっぷり見ることができた。

メインステージで演奏していたPhum Viphurit(https://www.youtube.com/watch?v=b7ffmtnuSGM)という人は国内でかなり人気があるらしく、完璧なシンガロングをしている人も多かった。
スゴテクのバックバンドを従え、コジャレたイキフンのコードを使いつつポップな歌ものという意味で、この人は「タイの星野源」的なポジションのアーティストであると私は理解した。
タイの星野源はタイの星野源らしくサービス精神旺盛で、バンドメンバーがボイパでビリーアイリッシュの”bad guy”を披露したり、ラストは演奏しながらひとりずつ楽器を交代していくという大技で場を沸かせていた。

Phumのステージが終わって気が付くと、空はすっかり真っ暗になっていたが、これは良いことだった。
なぜならホラーズの出番は目前に迫っており、夜は彼らの領分だからだ。

わたしたちはぬるぬると最前列に入り込むことに成功し、ストッパーにもたれながら開始時刻を待った。
転換中のSEでThe Verveのビタースウィートシンフォニーが流れただけでみんな笑顔になり、合唱が起こった。
彼らが登場する直前まで、「あまりきゃーきゃーいうと悪目立ちするだろうか」と考えていたが、そんなことはまったくの杞憂であった。
ふとライトが消え、Mirror’s ImageのイントロのSEが流れ出した時の歓声はーーこれは想像だが、周波数的には国立競技場に嵐が登場した時と変わらなかったはずだ。こんなに切羽詰まったファンが大勢いたなんて、やはり世界は想像よりずっと広い。

最初に見えたのは、ドラムのジョー(Joe Spurgeon)のスキンヘッドだった。彼はほんの少し前まで、賑やかなキャラクターと少年っぽいルックスにより「みんなの弟」的存在だったはずだが、一瞬の隙にゴリゴリのスキンヘッドゴスに進化を遂げていたポケモン的人物である。今やDJではハードテクノしかかけず、どでかい南京錠のネックレスをし、インスタにはモノクロの写真のみをアップし、脇腹にはサソリのタトゥーを入れ、OLD ENGLISH TEXT MTっぽいフォントの入った黒い服を着ている。こういう彼の徹底した硬質なセンスが最近のホラーズのインダストリアルな気風に影響を与えたのかもしれない。そんな一見コワモテ風のジョーだが、子煩悩な一児の父だったりもする。

次に姿を現したのはトム(Tom Furse)。トムはモジュラー使いで、猫派で、飄々としていて、ダッド・ジョークが好きで、いつもクールで、ワーカホリックで、そしてギターのジョシュを愛している。
彼はジョシュをbae, my main squeeze(恋人), bear boo, loveと言い、ツアー中の彼のカメラにはジョシュばかりが映っていて、インスタでは定期的に愛を発信している
またバンド外音楽活動に積極的で、remix制作、プロデュース業、ライブサポート、映画のサントラ担当、NTSラジオのDJなど音楽キュレーション的な活動まで幅広く活躍、最近ではCoachのプロモーション映像(水原希子が出演していた)の音楽も担当していたので驚いた。

ジョーがビートを刻みはじめると、トムのあのループする、不思議な浮遊感のあるシンセのフレーズが重なる。「Mirror’s Image」をライブの1曲目に持ってくることの利点は、観客を煽るようにじわじわとひとつずつパートが増えていくところだ。

つづいて現れたリース(Rhys Webb)があの印象的なベースラインを弾き始める。彼はこのベースリフを思いついたというだけでも一生楽に暮らす権利があるが、さらにロンドンのインディー/サイケデリックロックシーンを盛り上げたThe Cave Clubというイベント(まだ有名になる前のコナンモカシンやTOYも出演していた)のレジデントでもある。
リース、スラックス姿のリース、ベースを弾きながら壊れたオルゴールのようにくるくる回るリース。彼はとびきりスウィートで、近づくとフローラルの香りがする(らしい…サマソニでサイン会に参加したファンによると)。
影のリーダーというか、お兄さん的存在でもある。寡黙なメンバーの代わりにインタビューに答え、ツアー中はジョシュの髪を刈ってやり、そして実際、ジョーの義兄でもある。(ジョーの配偶者はリースの妹。つまりリースはジョーの子供の叔父さんでもある)

最後にジョシュ(Joshua Hayward)の時空が歪んだようなギターサウンドが加わると、会場は完全に別次元へトリップしてしまう。
ジョシュには独自のスタイルがあって、常に髪のどこかにブリーチの束を作り、真っ赤な口紅を塗り、エフェクターは回路設計から自分で手作りし、苦しんでいる鳥みたいな声で笑い、トレードマークはクマで、自らのギターヒーローにはThe Crampsのポイズン・アイヴィーを挙げる。床だろうが仕事中だろうが関係なく寝てしまい、ファリスをして「こんな変なやつはじめて」と言わしめる自由人。
ちなみにお気に入りの赤いリップはmacのruby wooらしく、ついにはリップの色に合わせた美しいシグネチャー・ギターを作ってしまう徹底ぶりだ。(買えます

そして、ステージにファリスはまだ登場していない。わたしたちはファリスをじらされているのだ。
イントロは延々と引き伸ばされ、さらにファリスをじらされる。限界を迎えた者たちが断末魔の叫びみたいな悲鳴を上げ始めた頃になって、満を持してわれらがボーカリストは、威風堂々というよりは突如としてぬっと、闇の中からはみ出したのだ。

女性向けのドレスでも、前衛的なデザインでも、すべてのファッションはファリスに着られた瞬間に飼いならされてしまう。
その日の彼は透け透けの赤いシャツに黒い革ジャンを羽織っていて、目の周りは暗く塗られていた。
近頃の彼は男女ユニットCat’s Eyesの片割れであるレイチェルと、実験的なアイメイクを模索していて、彼自身も「SUQQUのメイクブラシっていいよね」とコメントする程度にはコスメ上級者になっている。

(ちなみにこのメイクは”ロックの名盤ジャケットをコンセプトにしたアイメイクシリーズ”で、ピンク・フロイドの『狂気』がテーマ。コスメに疎いのでよくは知らないが、Pat Mcgrathのシャドーとかがお気に入りらしい)

この投稿をInstagramで見る

Faris Badwan & Rachel Zeffira(@catseyesworld)がシェアした投稿

鞭のようにマイクコードをふるいながら歌う彼は、闇のプリンス、またはSMのクイーン、または癇癪を起こしたカイロ・レンのようにふるまうが、ステージを降りれば物静かな文学青年に戻る。
彼は夜型で、左の手首にちいさな蝙蝠をたくさん飼っていて、アウトサイダーアートを愛し、ジョシュが晩飯に頭足類(イカ)を食べたことをずっと気にしている。
たぶん、友達思いで約束を守る人間でもある。メンバーみんなで一緒に見に行こうと約束していた『ブレードランナー2049』を”裏切り者”のジョシュが他の人と見に行ったことが発覚した時には、猛烈に抗議していたから。

さあ、これで役者が揃った。というより、やっとのことで、ホラーズが完全体を露わしたのだ。

ライブ中盤で、ファリスが「オーストラリアからやってきたガールズたちへ捧ぐ」と言って演奏したのは”Sea Within a Sea”だった。

(実は、ライブの数日前に公式インスタに「姉妹ではるばるオーストラリアからショーを観にいくよ!」とコメントしていたファンがおり、それに応えた形とおもわれる。優しいね。そして偶然にもそのガールズたちはわたしたちの右隣にいたので、その瞬間の爆発ぶりは凄かった)

<聞いた話じゃ/人は独りで/危険な岩場を灯りもなく/裸足で歩くものらしい/そして見つけた聖地にも/留まることすら叶わない/海へと行進する>

和訳歌詞の引用元の記事いわく、ファリスの詩は”(アルチュール・)ランボーみたい”である。

プライマリーカラーズというアルバムは、窓のない部屋で作られたらしい。聴き進むうちにどんどん世界から切り離されていくような感覚になるのは、そのせいだろうか。
そしてこの曲は、そんなアルバムの最後の曲である。
闇を伝達して残響のほうが先に届いてきているようなボーカルには実在の不安があり、憂鬱と期待がレンチキュラーレンズのように反射するシンセが波間に煌めいている。

Mirror’s Imageと並ぶ彼らの代表曲だが、実はシューゲイザーとかその手の音楽がまったく分からなかった私は最初のうち、なぜこの曲がここまで評価されているのかいまいちピンと来ていなかった。(タイラー・ザ・クリエイターがお気に入りと言っているのを知ったときもただ驚いた)
そこでわたしはちょっとした巡礼を開始することになる。といっても、ホラーズの記事やインタビューにレファレンスがあがったり、歴史的に関係がありそうなアーティストをひたすらyoutubeとかspotifyで聴きまくったというだけの話だが。元々好きだったアーティストであっても、ホラーズのピープルツリーという文脈からもう一度聴き直してみることにした。

CAN、ノイ!、マイブラ、バウハウス、The Fall、July、THE POP GROUP、Silver Apples、ニュー・オーダー、suicide・・・三十路を超えてからマイブラのLOVELESSを真剣に聴くことになるとおもわなかったが、真剣に聴いた結果、すごく良かった。
それで、驚いたことに、そうした一連の”ロック修行”から戻ってくると、わたしは”Sea Within a Sea”のサウンドにある奥行きと、想像力と、緻密さが突然「見える」ようになった。
これはロジカルな理解とは違う。昔Eテレのサイエンス系ドキュメンタリーで、人は訓練をすれば地球の磁気を感じることができるようになり、いわば”絶対方角感覚”を身に付けられるというようなことをやっていたが、まさにそんなような身体的な理解で、要は、このジャンルのロマンチズムの方角がわかるようになったという感じだ。
芸術に対する感性なんてのは意外にアテにならないもので、好き嫌いの以前に「見えてすらいない」ということもありえるのだ。

プライマリーカラーズの話が続いてしまったけれど、もちろん他のアルバムにも彼らのハイライトとなる曲は沢山ある。
”Still Life”はサイケ・ポップの文句なしの名曲で、<When you wake up, When you wake up, You will find me>のフレーズはライブではいつも大合唱になる。(いわばホラーズ版Creepだ)抽象的な詩だけれど、わたしはどこか生と死のはざまにいるような、SF的な手触りをかんじる。

太陽から遠ざかり続けていたホラーズが、陽の光を取り入れた時期の曲でもある。(そして今度は目が眩むほど近づきすぎたのかもしれない)

そして最近のホラーズはセットリストの最後には必ず”Something To Remember Me By”という曲をやるのだが、今回も例に漏れずだった。
これは最新アルバムの「V」に収録されている曲で、テクスチャー・ポルノ的でありながらポップでもあるというのがホラーズの最新モードなのだ。
「踊れるロック」が台頭する中でもかたくなに誰も”踊らせなかった”ホラーズだが、あっさりと、しかも圧倒的な祝祭感をもってそれを覆してしまった。


(MVの内容がいろんな意味で凄いので、わたしは最初自分が幻覚を見たのかとおもった。ジョシュよ。。)

(MVの内容がいろんな意味で凄いので、わたしは最初自分が幻覚を見たのかとおもった。この人たちは何をやらされているんですか?)

暗闇のダンスフロアが誰も差別しないことと、孤独を愛するゴスの風土は結構マッチするもので、それは意外にも優しくて多幸感があふれる世界だったりする。
ピンクと水色のライトが降り注ぐなか、この祝祭的な、4小節のループに閉じ込められたエレクトロニックで幻想のような空間も終わりを迎える・・・。

トリのKing Gizzard & The Lizard Wizardが飄々としつつなぜか牧歌的な変態ヘヴィメタル響かせる中、泡のように生まれては消えるモッシュピットを見ていたらわたしにも酒が必要だと思えてきた。どうせまともに飲めないのだが。

アウトロ

帰り道、わたしは落ち込んでいた。
タイ旅行もホラーズのステージも素晴らしかったが、素晴らしすぎたが故にわたしはリゾン・デートルを揺るがされていた。

私「いっそホラーズになりたいわ自分が。あれになりたい。でもホラーズといまの自分を相対化することで自分の卑小さが際立つことによってめちゃ落ち込んでしまうんだよな…」

友「わかる、もはや推しに「なりたい」ってなるよね」

私「あ、わかる?わかってくれる?」

友「うん、ていうかそれ限界オタクあるあるだから。落ち込むところまでセットでみんな通る道だから」

私「え?あるあるなの?みんななってんの?そっか、なんか安心した…とりあえず、帰京したらゴスをめざすことにする。話はそれからだ」

仲間がいてよかった。わたしはこの時グループセラピーの重要さを改めて理解し、プロパーなゴスを目指すため筋トレを開始することを心に決めた。なにをやるにも身体が資本だからだ。ちなみにまだ始めていない。

まとめに入るが、これから先、日本がお金がなくて呼べない海外アーティストを周辺アジア国のフェスが招聘する流れは確実に来る予感がするので、常にアンテナを張っておくようにしたいとおもう。

最後に、野生のインターネットオーガナイザーはとさん、アドベント企画をありがとうございます。他の方の記事も毎日楽しみにしています。

ホラーズ関連リンク集

ホラーズ公式インスタ…ここさえ追っていればほぼ全ての情報が把握できます。主にファリスが運営しているようです(文末に💄マークが付いているときはファリス)
トムのインスタ…ストーリーはほぼ日更新、最近のイケてる音楽とか、ガジェットとか、セルフィーとか、猫とか、ジョシュとかが出てきます。
アルバム『V』発売時のリリースパーティ動画…フランスのARTEが映像制作していて演出もかっこいい。カメラワークが完璧!最近のホラーズを知るならまずはこれという映像。
日本でのファリスとリースのインタビュー動画…貴重な日本語字幕つきインタビュー動画。リースの人当たりの良さが発揮されている。
アルバム『V』の全曲解説動画…プロデューサーのポールエプワースとメンバー全員で語っている動画。ジョーがこんなに喋っているのも貴重。
KEXPでの演奏動画…ここまで高画質の演奏動画自体がそもそも貴重。ジョシュのシグネチャーギターの美しさがよく見える。
アルバム『Skying』発売時の演奏動画…インタビューと演奏、ボウイ「サフラジェットシティ」のカバーなんかも披露していて面白い。