人々レーベルについて

今年4月に立ち上げた音楽ネットレーベル「人々」は、色んな人々の協力のおかげで、1stコンピレーションアルバムをリリースすることが出来た。

https://hitobito.bandcamp.com/album/unfinished-works

すべては、「あなたの作れなかった曲を送ってください」という謎かけみたいな募集に対して、そのコンセプトに共感してくれた人、作品を送ってくれた人、アルバムを聴いてくれた人、評価してくれた人、がいてくれたおかげなので、本当に感謝。

コンピ収録曲にはそれぞれが思った「未完成」としての線引きが表れているので、作り込まれた曲もあれば、アイデア素材的な曲もあり、とにかく全くコンピとしてのバランスがとれいていないところが客観的にみて面白い。でもなんかタイトルの付け方含めみんな素っぽい気がするのは共通点というか、取り繕ったところがない感じがする。

送ってくる方も、もしかしたらそういう自分の内側の部分?を見せる勇気が必要だったかもしれない、とおもうが(でも、どんどん見せていったほうがいいとおもう、みんな面白いから)、コンピに参加してくれた温泉マークさんとsizroさん、そして途中からhonninmanさんとFendoapさんという豪華メンバーに参加して頂いたスペースでもこの辺のお話をして、これはもうインターネットに残されていたグッドなバイブスが出まくっている語りの場になったので是非聞いてください。

わたしの好きな映画で『ジャコメッティ 最後の肖像』というのがあるが、ジャコメッティはなにかが気に入らなくて次々に自分の絵を破り捨ててるのだけど、何が気に入らないのか彼自身も良く分かっていない。

映画では、ジャコメッティの作品を完成させるためにある”天才的な”手法が用いられるわけだが、多分「完成」の方法っていうのは意外なところに沢山あって、例えば、それ以上書かなかったことで完成した作品もある(カフカの『城』とか)。

そして大抵は、自分の中で未完成だと思っていてもそれがパブリッシュされた段階で完成品と見做されるが、未完成コンピは「未完成」と言い張っているので、強制的に完成品になることを回避している(のかもしれない)。未完成コンピの作品にはCCライセンスが付いているから、みんなが手を入れてもいい。みんなが永遠に手を入れ続けていくのもいいかもしれない。盆栽みたいに。

しかし、じゃあどうやったら完成するのか?というのはレーベル的にも考えていきたいテーマで、まあ一番有効な完成の方法は「〆切を決める」だということはよく知られているが、それ以外にも色々な手段を模索していきたいとおもっている。

今後考えている人々のコンピ案その1

Unfinished Works vol.2

考えているというか、Unfinished Works用の音源は随時募集しているので、もう走り出している!既に送ってくれている方々もいるし、引き続き、近所の小学生から星野源まで気軽に送ってきて欲しい。

今後考えている人々のコンピ案その2

「NewJeansのコンピに応募したけど落ちた曲」という設定の曲を集めたコンピ

「NewJeansの新曲コンペ発注書(架空)」を配布し、それに従って作った曲を集めるコンピ。発注書にはBPM目安、曲の構成/雰囲気の参考にしてほしい既存曲等の情報があり、参加者はそれに沿う形で曲を作るが、最終的には「落ちた」曲なので、発注書を全無視するのもありだし、結局完成しなかった、というのもあり。それぞれが何故落ちたのか、という理由も併せて提出すると面白いかも。「CMソングなのに暗くなりすぎた」とか「参考曲をそのままパクリすぎた」とか。

なんでこれをやりたいか。以前サウンドシェアというイベントに参加するために曲を作った時、何かを完成に近づけていくっていうのは己の手から離していくことだな~という実感があり、ということは反対に、エゴと深く絡み合ってしまうほど完成から遠のいていくんじゃないか(リスナーとしてはその人のエゴが煮詰まった作品も聞きたいが)…

じゃあ、仕組み的にエゴを減らすには、誰かから発注されてその通りに作っているのだ、という体裁をとればいいんじゃないか、というのがこのお題の目的。

何故NewJeansなのか?→なんか、みんな好きだから。。というのと、他のグループよりType Beat的な感性で作りやすいんじゃないか、たぶん「なにわ男子」とかだととっかかりが分からなすぎる。でもNewJeansってそのまま名前使うと怒られそうだからなにかそれっぽい他のグループ名を考えた方がいい。

でも参加ハードルがちょっと上がるのは確かなので、参加者集まるかなあというのがネック。

コンピとして出せるかは分からないけどやってみたい事

nintendo switch版KORG Gadgetの対戦モードを使って、対戦しながら曲を作る

KORG Gadgetには複数人で同じ曲が共同編集できる「対戦モード」機能があるので、それを使って本当に対戦形式をやってみる。

攻守に分かれて、一方が曲を作る、他方はその曲を破壊する、というターンを数分ごとに繰り返して対戦する。

既定のターン数が終わったら完成。なお一度作成したトラックやノートを削除することはできない、とする(全部消す、が出来てしまうとゲームにならないので)が、音色、音量、ノートの高さや長さを変更するのはOK。

これもさっきのエゴを減らすと同様、自分の思い通りにできない部分からどういうものが出てくるか+制限時間という〆切があるので強制的に完成するという合わせ技。チェスとかオセロみたいに曲を作ることって出来ないかなという。やってみたことないんで出来るかわかりませんが。。

できれば対戦しているところ自体を配信なり動画にしてみたいけど、動画配信者じゃない自分には難しいかも。誰かやりたい人がいたら、やってほしい。

完成曲」コンピ

〆切を決めることで曲が「完成」出来るなら、各自1時間とかタイムアタックで強制的に完成とするルールで曲を作ってみる。それだけだと10minitesなんとか的なのと一緒なので、Unfinished Worksに入っている素材をお題として作ってみる、とか。

曲作りすごろくをプレイして曲を作る

「アルペジオを入れる」とか「キーをEmにする」みたいな指定がマスに書かれたすごろくをプレイして、各自がその通りに曲を作ってみる。すごろくをうまく作る必要がある。。

BPM20コンピ

遅すぎて、全部良い曲に聴こえる可能性があっていい。

低音質コンピ

最近、むしろ低音質を作り出すことのほうに技術がいるんじゃないのかという気がしたので、どうやって悪い音を作るのか、「クオリティ」に対抗する。

みりしらダンス動画から原曲を再現する

知らない曲のダンス動画をサイレントで見て、その動きから元の楽曲を推測して作っていくという遊びを思いついたのでやりたくなった。

これも対戦曲作り同様、作っている過程を動画とかにしたほうが面白い気がする。ひとりで完結できる遊びなので、ためしに自分で動画をとってみようかなと思っている。

最後に大事なこと

今後も多分、わたし自身は曲が作れなくて曲作れないよーとぐだっているはずだが(そもそも、自分が曲作れないからこのレーベルが出来た)、「作れなくても堂々としている」ということだけは未完成レーベル発起人としての責務だと思っている。そんな偉そうに宣言することでもないが。

でも多分それがレーベルをやるうえで一番デカい仕事な気がしている。何かを作り出す/作ろうとするプロセスにある美しさを少なくとも自分は信じぬくつもりだから、今後自分の出来なさに凹むことがあっても「出来ないから”才能”がない」とか、「”クオリティー”が低いものしか作れない自分はだめだ」みたいなことは自分から言っちゃあいけないな、と思う。本意じゃなくてもつい自虐したくなることはあるけど、自分を否定するのはまわりまわって他人を否定するのと一緒なので。